DACの比較試聴記

2003/2/18〜


ZIAのNewFusion64はもう1年以上電源を入れっぱなしで、真空管の寿命が少し気になっていた。取説によると平均寿命は8,000時間程度と書いてはあるが、一方で3〜4年は持つとも書かれている。私の耳で聴く限りでは歪感もなく購入当初と比べて真空管が劣化してきたとは思えない。コンディションは上々で不満もなく音的も満足している。

おなかが本当に一杯になったら、中枢神経がダメージを受けていない限り、どんなに自分の大好物を出されても食べられない。ひょっとしたらもっといい音が聴けるかもしれないと思っているうちは、心底今の音に満足はしていないのかもしれない。

あるいは自分の悲しいサガかも知れない。自分は「裸の王様」かもしれないという若干の不安と、とにかくいろいろ聴き比べてみたいという好奇心、といえば聞こえはいいが、要は根っからのスケベ根性が働いて、今回も比較試聴の名を借りてのお遊びである。

 

工業製品には必ず劣化なり消耗が付きものなので、ワインのように時間を寝かせればより芳醇な味に変化するというものではない。Fusionも少なからず初期特性は落ちてきてはいるのだろう。購入当時の音と今の音を聴き比べるわけにもいかず、ここである実験をしてみた。

FusionはD/A変換に一般的な「ビットストリーム方式」ではなく、「パレスアレー方式」を採用している。詳しいことは分からない。以下広告文より抜粋。

「ビットストリームとマルチビットに比較してパレスアレー方式の圧倒的な優位点は、ジッターを激減することにある。何とビットストリームD/Aの1,000倍以下そしてマルチビットDACの10倍以下に減少させる。又ビットストリームDAC上のランダムジェッターの10億分の1秒は、約67dBのS/N比、マルチビットでさえ94dB、ところがパレスアレーでは何と114dB以下...。他の優位点としては、大変低いバンドノイズとバンドRFにも決して影響されない点である....。」

う〜ん 何のことだかよく分からない。とにかく「膨大な情報量を獲得し、ナチュラルでスムーズ、フルボディそして素晴らしい魅力のあるサウンドを展開し、ビットストリーム&マルチビットとは全く異なり大変非凡なディティールと臨場感をもたらす」とのことだ。

いい事尽くめのようだが、音がいいか否かは最終的には消費者が決める。未だパレスアレー方式がDACの主流になっていない現状では??の部分もある。勿論本当にいい物でも、販売(営業)能力なりチャンネルなり製品以外のファクターによって評価が左右されるということも分かるが...。

まあ、そんなことはどうでもいい。私はこのFusionの音は大のお気に入りで、他のCDプレーヤー(DAC)よりも私好みの音が聴けるので大満足である。Fusionの音がこの「パレスアレー方式」によって決定付けられているとしたら、同じ方式をとっているDACと聴き比べをしてみたい。併せてFusionの真空管の劣化具合も確認できればと思った。

FusionのトランスポートメカにはSONYの213CCMレーザーが使われている。これはこれで大変優れたメカだと思うが、SONY得意の光学系固定方式のメカニズムではないのが残念だ。

以前CDトランスポート比較でCECのTL5100zのデジタルアウトをFusionに入れて聴いてみたところ、ボーカルの音、特に女性ボーカルの舌音、唇音の音にしびれてしまった。子音の消えゆく余韻、タ行で終わる例えばライツとかタイトとかのツやタの、舌がわずかに歯や上あごに当たって出る「音ともいえない音」にとろけてしまった。音場感と言うか空気感と言うのか声の広がりも自然でCDの音も素晴らしいと思った。

そこで今回のDAC比較試聴のトランスポートとして、このTL5100zを選択した。まずはこのTL5100zを我が家で行なえるベストな状態に追い込むことから始めた。先日ある所でCDトランスポートの聴き比べに立ち合わせて頂いた。フローティングされた機器が奏でた弦楽器の音が生々しかったことにヒントを得て、TL5100zを宙に浮かせてみることにした。

今までKP1100スケルトンの下にセットしていた磁力の力でボードを浮かす「リラクサ1」を取り外しTL5100の下に置いてみた。KP1100に使っていたときは、まあいろいろな要因もあるがハウリングマージンが格段に上がり、フルボリュームでも破綻しなかった。アナログでこれだけの効果があるのだから、デジタルでもきっといい方向になるだろうと思う。

これでTL5100zが擬似オラクル或いはTL0状態になった。機器の水平は通常のセッティングでほぼOKだった。

  

2/20

TL5100zはノーマル品ではない。以前雑記帳6にも書いたが、クロック(Lclock-C2)交換と電磁波チューンを施してある。スタビライザーもローゼンクランツのスペシャル版を使っている。重量増加による慣性モーメントの向上で回転の安定度も増しているだけでなく、このスタビライザーは回転に伴う微振動を吸収する効果もあるという。これでノーマル品を遥かに凌駕し、上級機のTL2やTL1にかなり肉薄しているのではないかと、勝手に思い込んでいる。

  
ノーマルのスタビライザーとの比較 CDとの接触面積が倍以上に増え、フライホイール効果も向上
併せてローゼンクランツのこだわりの2重構造、半田ダンプにより、回転に伴う微振動を吸収する

もともとCECの一連のCD(トランスポート)はスピンドル駆動方式 にベルトドライブを用い、スピンドルモーター部がメカ部シャーシから完全に分離されている。そのため、モーター自体から発生する振動や電源ノイズを根元から吸収遮断している。また、センターマウント方式により、メカ部を筺体中央に配置し、そのバランス効果によりスピーカーからの音圧はもとより、内・外部からの微振動も巧みに吸収・遮断している・・・らしい。

このように振動に対してこだわりの対策を取っているTL5100zを、更にメカニカルアースとしてリラクサ1を使い、床や空中からの微振動をシャットアウトさせてみた。これでTL5100zが完全に空中に浮かんでいる状態になったので、ひょっとしたらオラクルやTL0よりも外部からの振動の影響に強いかも知れない。

少しやり過ぎかもしれないが、大した労力でもなければ、上級機に買い替える程のコストもかかっていない。今の自分に無理なく出来る最大のアプローチだけはやってみようと思っている。しかし自己満足の世界とはいえ、それで結局のところ音が良くならなければ徒労ということになる。音が良くなって、初めて何ぼのものである。

これで出口は固まった。次にケーブルである。デジタルケーブルはカルダスlightning15に端末をクライオ処理されたVAMPIRE/PADを取り付けたものを使ってみた。ほかにもS/A LABのデジタルケーブルやベルデンのケーブルも聴き比べの為に使ってみた。ちなみにTL5100zの電源ケーブルはリーズナブルでコスト/パフォーマンスに優れたAETのTAITAN ACを使用する。

    


始めにTL5100zのデジタルアウトからZIAのNewFusion64のデジタルインに繋なぐ。FusionからはGOLDMUND MIMESIS√SRプリを通してMEJO GRANのBIACT(バイアクト)に入力し、そこで高域と低域を振分けGOLDMUND MIMESIS√SR STREOとMONOに供給する。スピーカーはブリロン1.0としてウーハー側にMONO、ツィーター側にSTREOを繋ぎ、両ユニットを分離してバイアンプで鳴らす。

DAC接続図

Fusionと比較試聴するのはCHRODのDAC64である。CHRODのDAC64はFusionと同じくWTAフィルターを搭載したパレスアレイDAC方式を採用している。ご存知のようにChordはハイパワーSMPSハイブリッド電源(いわゆるスイッチング電源)との組み合わせで、次々に意欲的な製品を送り出している。このDAC64もこの強力な電源部とパレスアレーDACで、昨年世界のオーディオ界に新風を巻き起こし高い評価を得ていると聞いている。



   

手元にあるDAC64はソフトウエアーが最新のバージョン5になっている。パレスアレイも4世代目となり、64bit 7次ノイズシェイピング・カーブ、2048倍オーバーサンプリングという数字をたたき出している。タイムロード社の取説を見るとWTAフィルターの解説が載っているが、私には残念ながらよく分からない。以前タイムロード社のある方に懇切丁寧にレクチャーをして頂いたことがあるが、わかったようで分かっていなかった。でもとにかくこのDAC64は高性能のようだ。

「サンプリング・レートが高いほうが音質的にいい。一つ一つのトランジアントのタイミングがより明細になることにある。人間の耳と頭脳はマイクロセカンド・レベルの位相のずれを聴き取ることが出来、もし、1μsecのタイミングの違いを録音システムで録り込もうとするなら、サンプルレートは1MHzでなければならない。この問題を解決し、現実的なサンプルレートで高い解像度を実現するのがデジタル・フィルターだ。しかし現在入手可能なフィルター・デバイスは256タップ位だが、これではトランジアント・タイミング精度をより高めたいという要求に合致しないばかりかタイミング・エラーの原因になる」「WTAフィルターは長いフィルター・レンクス・タップを使わず〜エラーを最低限に抑えることが出来・・・・」
う〜ん 私の脳みそはアナログ回路で出来上がっているようだ。チンプンカンプンだ。

RAMバッファーシステムは、取りこんだ信号をいったんメモリーに貯め込んだ上で信号処理を行なうもので、それが長いほど、処理に余裕が発生し、音質に良い影響をもたらすという。処理時間の分、信号が遅延する。4/5秒の遅延が生じるが、これが比較試聴にはとても便利だった。

ともあれ、これで5通りの比較試聴ができることになる。少し複雑だが整理すると

@TL5100z単体
ANew Fusion64単体
BTL5100zからDAC64へ
CTL5100zからFusionのDACへ
DFusionからDAC64へ


全部聴き比べを行なうとすると、少し面倒だ。今回のメインの聴き比べは BTL5100zからDAC64へ CTL5100zからFusionのDAC に的を絞った。おいおい他の組み合わせでも比較試聴してみたい。パーペチュアルのP-1&P-3との聴き比べもそのうちやってみたい。

DAC64のセッティングにはオーディオリプラス社の石英インシュレータでDAC64を3点支持すると効果があると聞いた。ガラスの上に石英、いかにも透明感が出そうである。JI Projectのコーンも効果がありそうだが、こちらはFusionに使うことにした。

   
石英でできたインシュレーター 正に宝石である 

ここで、ブリロンをバイアンプで鳴らすのにとても重宝したのが、メジャグランのバイアクトだった。LOWとHIGHとを別々のアンプ(ゴールドムンドのSRシリーズ)で鳴らす際、細かい出力調整が出来るだけでなく、LOWとHIGHのイコライジング調整が出来る。何度かカット&トライで好みのポジションを見つけた。ポジションは画像の通りである。いくらか高域を強調したことによってより音の透明感が増したように思う。

    

これで全ての準備が整い、いよいよFusionとDAC64の対決となった。比較試聴に用いたソフトはFimレーベルから出されているXRCD2  Jacinthaの"HERE`S TO BEN"から始めた。3曲目に"DANNY BOY"が収められているが、出だしから暫らく無伴奏のアカペラが続く。

セレクターで切り替えるとFusionから約4秒ほど送れてDAC64の音が出る。昨年の正月に独りでこもってSATRIのアンプを比較試聴した時のことを思い出した。今回もかなり濃いそしてエキセントリックな試聴となった。これからじっくり聴き込んでみる。
    ただ、DAC64から出てきた最初の音には思わず身震いした。 2/20
             To be Continued



DAC64のセッティングを変えてみた。フォノイコをザクシーズ]のすぐ下に置いた関係で
ノイズが気になり、DAC64はTL5100Zの下に移動させた。

  

  

3/5