2003/01/19

野中さんのMJ誌の紹介には「超低域再生に挑む壁バッフルの大型ルーム」とあった。 訪問する前に写真やHPから私なりにその音を想像してみた。しかし写真や記事を拝見する限り、私の今までの想像力ではどんな音かはなかなか見当が付かなかった。また写真に写っている野中さんは(大変失礼だが)一見強面で少し近寄りがたいイメージがあった。

ところが実際にお会いすると、とても気さくで優しい方だった。初対面であるにもかかわらずすぐに打ち解け合い、以前からの知り合いのような感覚を覚えた。この自然体の親近感の秘密はあとで理解できた。野中さんの人柄は30年にも及ぶ栗橋町議会議員生活の中で培われたと思えた。長い議員生活を経て「徳」を積み上げてこられた様子が立居振舞から漂っていらっしゃった。
早速野中さんの普段聴くレベルで音を聴かせて頂いた。写真から、そして現物のシステムを目の前にして、想像していた音とはかなり違う。まず第一に試聴の音量レベルが想像していた音量と比べかなり低い。低いといっても大音量派の私のレベルからだが。
私は先入観でてっきり大音量で聴いていらっしゃるものとばかり思っていた。野中さん曰く「私は等身大の音で音楽を楽しんでいるんです。ベースの音も実音を基準に試聴レベルを決めているのです。」原音尊重派という言葉があれば、まさしく野中さんはリアリティある生音を追及されていらっしゃると思った。
アキュフェーズのデジタルプリアンプDC-330での出力は30〜32db 聴感上は恐らく私のマッキン換算で40dbくらいではないだろうか。ちなみに私の普段の試聴レベルは70〜75dbである。野中さんは「音量は自由に自分の聴きたいレベルにして下さい」とおっ>
しゃる。 因みに「埼玉オーディオクラブ」の方達は大音量で聴かれているという。でもここは「郷に入らずんば〜」で、やはり主の普段の試聴レベルで聴いてみたい。今回はあえて終始レベルは低めにして聴かせて頂いた。

マルチアンプから送り出される 地を這う超低音、部屋の空気を揺るがす音圧、何処までも伸びきった高音を想像していた私には意外であった。これが45年以上も音を追求してたどり着いた結果なのか。ハッタリがましく、これ見よがしの音とは全く違う。私の脳裏には「自然」という言葉が浮かび上がった。
部屋にしても、共振を無くす為にありとあらゆる対策を施していらっしゃる。自ら設計して施工した部分も随所に見受けられる。この器にしてこのシステム。有り余る「余裕」の中で奏でられる実音レベルの音。「能ある鷹は爪を隠すの」例えでは表現できない。フェラーリやポルシェがアウトバーンを時速60kmで巡航しているようなイメージだ。秘められたパワーはいつどこで爆発されるのだろうか?
持参したソフト 私の低音のリファレンス ヘルゲ・リエン・トリオのTakeFiveをアキュのプリレベル32dbで聴く。......低音の出方が自室とはまるで違う。低域のかぶりは全くない。ウーハーボックス自体が小部屋になっている密閉式のシステムの低域は、制動力があって音離れが俊敏だ。いわゆるハイスピードな立下りというのだろうか。おどろおどろしくない引き締まった低域の音圧=空気の層が試聴位置に押し寄せてくる。どう表現したらいいのだろう、鈍重でない軽やかな低音といえばいいのか。アキュのヴォイシング・イコライザーDG-38のスペクトラムアナライザーを見ると16Hzが-5dbのレベルで出されている。たまげた。
ピアノ、シンバルの中高音も澄み切っていて非常に繊細である。しかも力強い。繊細で力強い?言葉としては変な言い回しだがそんなイメージだ。あれだけユニット(片チャン合計9本)がありながらも音の定位はピシット決まっている。位相管理、タイミング処理に恐らく血の出るような努力をされてこられたのではないだろうか。目を瞑るとシングルコーン一発から出された音と錯覚する。ステージが目の前に広大に広がり音場感、空気感も申し分ない。
MJ誌掲載時から少しシステムの変更があった。フォステクスの80cmウーハーは床に取り外されており、サブウーハーは特製TAD1601ユニットが4本になっていた。
ウーハーはALTEC416−8Bが片チャンネル2本、つまり低域用に38cmユニットが8本使われている。因みににミッドバスにはマッコーレ25cmが2本、ミッドにSME2inch、ミッドハイにTAD1inch、ハイにエクスクルーシブET−703の6チャンネルマルチシステムである。それらをマルチチャンネルで合計11台のステレオ・パワーアンプで駆動させている。



マルチで超広帯域を出しながらオーディオはここまでやらないと自然な音 HiFidelity
は追求できないのか。気が遠くなるような思いと、つくづくオーディオは奥が深いと感じざるを得なかった。
帰りの車の中で種子島さんと話しているうちに、むくむくとマルチへの欲望が湧き上がってきた。以前中途半端で止めてしまったから、多少の後悔はある。種子島さんは「アイワンの澄み切った音を中高音部に持っていき、低域への負担を軽くして使ってみるのもいいものですよ」と盛んに悪魔の囁きをしている。いやいきなりマルチでは大怪我をする。せめてバイアンプくらいにしてみようか。そういえばマッキンが今出番を待っているからなア〜 などとよからぬ想像をしつつ、今日の野中さんの音を思い出していた。