2002/11/9
関東地方は今年2番目の木枯らしが吹きまくった。北風で澄み切った空の下、東武伊勢崎線沿線 越谷のAE86さんのお宅を訪問した。長岡式共鳴管スピーカー ネッシーを5本も飼いならし、更に三管プロジェクターで本格的に映像も楽しまれている自作派オーディオ&ヴィジュアルマニアのAE86さんのお宅は、ホームページで見ていた画像からは想像できないほどの迫力があった。

そびえたつ3本のネッシーUと46cmウーハー 正に機器の塊 画像では分かりにくいが実際はド迫力
何はともあれまず音を聴かせて頂いた。ネッシーの音は、共鳴管から抱くイメージでふっくら、ゆったりした音を想像していたが、いやはやとんでもない。超ハイスピードな音の上に、重低音の迫力といったら、気持が悪くなる程(笑)に部屋の空気を揺さぶっていた。今まで300人近い訪問者がいらしたそうだが、皆さん一往に驚いて帰られたそうだ。この音を聴いてクールに「ふ〜ん」と言ってすまし顔で帰られた人は恐らく誰一人いないのではないだろうか。この音の凄さの秘密は一杯あると思う。AE86さんは音に関わる仕事をされている。仕事柄、プロの明確な判断基準(音の座標軸)を持っていらっしゃるからここまで音を追い込めるのだろう。一流の耳と技術がなせる技である。具体的な機器の構成はAE86さんのHPを見れば分かるので省略させて頂く。
さてお次は化物(失礼)10連トランスの電源を持つフォノイコの音だ。立て続けにレコードを聴かせて頂いた。AE86さんが日本 いや世界一のフォノイコと豪語しているだけの事はある。極めて自然で、誇張感が無い音だ。よく「アナログレコードにはこんなに情報量があったのか」という記述にお目にかかる。今日私もこの耳で同じ体験をさせて頂いた。
低域の下支えが見事で、音にならない音?までしっかりと出している。スタジオの外来ノイズ(おそらく建物の外の車の通過時の振動音等)やスタジオの床の振動までをもマイクが拾ってレコードにカッティングされているのだろうが、並みのシステムでは全く音になって出てこないだろう。CDではおそらくこの辺の帯域の音はリミッターをかけて初めからカットして、聴きやすくしているものと思われるが、レコードにはきっちりと録音されている。この辺の音までもが入っているからアナログの音はリアリティに富んだ自然の音に聴こえるのかもしれない。AE86さん特製のフォノイコは、時折音にならない不気味な空気の揺れをも再現し、空恐ろしくさえなってくる。
何も低域の音ばかりではない。20KHz以上の倍音成分の音もレコードの中には封印されている。これを引き出すためには、カートリッジをはじめアーム・ターンテーブルのシステムやスピーカー、アンプ等の相乗効果が必要だが、フォノイコによる力も見逃せない。音がより自然に聴こえるたのはこのフォノイコの実力の証とみた。

誰がこの塊をフォノイコと看破出来るだろうか だんだん追加されとうとうトランスが10個になってしまった

普段はラックに押し込まれ全体像は見れないが、今日は特別サービス?全容をつぶさに観察できた。
フォノイコライザーといえば.........。
実は今日もう一つの目玉製品に出くわした。ここでバラしてもいいのかな?なんとCHORDのフォノイコライザーの試作機だ。CHORDといえば「スイッチング電源」を使ったアンプで今注目を集めているブランドだ。アンプばかりでなく、今年コンパクトなDAコンバーター、DAC64を世に送り出し、数々のグランプリを取った事でも有名だ。さてそのCHORDのフォノイコ。試作機といってもほぼ製品版に近いと思われる。ただ、まだ名称も価格も決まっていないとのこと。年末か年明けには市場でお目にかかることが出来そうだ。この発売前のプロトタイプのフォノイコを幸運にもいち早く聴く事ができた。

真上から見たところ 大きささはDAC64と同じ H60×W338×D145(mm) MM MC対応
ネットの世界では有名なハンドル.ネーム「シト」さんがお持ちになってこられた。余談だがAE86さんのお宅でシトさんにお目にかかれるとは思っていなかった、その上CHORDのフォノイコとは...。DACに続き密かにフォノイコまで作っていたとは驚きである。外観はDAC64と全く同じである。天板に二つのガラス製の窓がある。スイッチを入れるとここからブルーの光を発して、見ているだけでもファンタスティックでかつデザインセンスの良さが光る。MMとMCに対応しスイッチ一つで各種設定が出来る。ただ不思議な事にアース端子が見当たらない。シトさんに聞いても、まだ取扱説明書もない日本に入りたての製品なので、細かい事は不明だとの事。電源は勿論お得意のスイッチング電源だ。AE86さんは電源に苦労され10個もの大型トランスを繋げたが、このフォノイコをご覧になって、ここまでコンパクトに仕上げられ、おまけに音が良かったらどうしようと少し不安げであった。
シトさん来宅から電源を入れっぱなしにしてほぼ2時間経過し、機器も暖まった所でいよいよ試聴の開始だ。シトさんも昨日この音を聴いた時には、一瞬凍り付いて動けなかったという前フレがあったので、固唾を呑んで耳を傾けた。4人ともしばし無言と思いきや、AE86さんが真っ先切って「これはいい!」と発した。「21世紀の代表的なフォノイコの一つになる事間違い無しだ」と言い放った。シトさんも「ンでしょ!こんなもの作っちゃうんだから...」
私の下手なレビューよりAE86さんの言葉を引用して、あとはこの音を想像して頂きたい。「私のシステムでここまでタイトな音を聴かせるのだから、一般のシステムではもっとタイトに聴こえるはずだ。コニサーを超える音を作った私も、ここまでコンパクトでこんないい音が聴けるのなら、是非とも欲しい。若干高域に詰めが欲しい所だが、製品物でこれを超える音には出くわした事が無い」と。今から40年前にレコーディングされたLIVING
STEREO盤のシエラザードを聴きながら、私も脳からα波がほとばしり、脳内麻薬で恍惚のよだれを垂らしていた。
10連結トランスフォノイコと比べると、ハム音が気になった。音の重心も少し軽めに感じた。プロトタイプだからであろう静電気も少し拾う。軍配はネッシーサウンドで聴く限り私的には10連結トランスに上げるが、しかし恐るべき能力を秘めていることには間違いない。

このブルーに光るイルミネーションが何ともいえない雰囲気をかもし出す。
一通り試聴も終えたところで、シトさんからデジタルの講義を受ける。シトさんは雑誌社の取材を2〜3日前に受けたそうだが、そのダイジェスト版「デジタルの本当の話」のミニ講義だ。「ギザギザ型のデジタルの波形を滑らかに曲線状にする技術を開発した」なんていうキャッチコピーが如何にデジタルのことを分かっていない、まやかしの話であるかを数学の量子論を持ち出して分かりやすく話して下さった。話の半分以上は口ぽかーん状態であったが、今まで誤解していたデジタルの一部分が分かった(様な気がする)。
今日もまたAE86さん、シトさんという達人に巡り合えた。オーディオの世界は深くて広い。
AE86さん訪問 スナップ写真
AE86さんの部屋 正面 |
CHORDのフォノイコ ガラス面 スイッチONでブルーに輝く |
超重力級ターンテーブセット アナログ針はZYX ラックと併せ総重量500kgはあるという |
アナログ アームのコレクション カートリッジは山とあった 3管プロジェクター |
CHORDのDAコンバーター CDの試聴はこれを使用した |
1960年録音のシエラザード セッティングに取り組むAE86さんとシト 40年前の録音とはとても思えない さん見守る天野さん |